海外在住の相続人の必要書類と取得方法は?

在留邦人(海外在住の相続人)の特有の問題点として、在留邦人の住民票と印鑑証明書が取得出来ないことが挙げられます。

以下の書類が住民票と印鑑証明書の代わりの書類となります。

  • 住民票→在留証明書
  • 印鑑証明書→署名証明書

在留証明書と署名証明書はどこで取得出来るのか?

現地の日本領事館で在留証明書・署名証明書は取得が可能です。
日本領事館は予約制で混みあっていることもありますので、日程にゆとりをもって手続きを行って頂く必要があります。
在留証明書と署名証明書を取得する際には、以下が必要となります。

  1. パスポート
  2. 滞在許可を示すもの(ビザ等)
  3. 手続費用

予め以下を準備しておくと便利です。

  1. 戸籍謄本(原本の必要はありません。コピーでもPDFでも画像データでも構いません。申請書に本籍を記載する欄があるため、予め分かっていると便利です。)
  2. 提出理由(当事務所では、通常依頼人には、『遺産相続手続きのため』と記載して頂いております。他の提出理由を記載しても、当事務所では、今まで特に手続きが出来なかったことはありません。)
  3. 提出先(当事務所では、通常依頼人には、『金融機関等』と記載して頂いております。他の提出先を記載しても、当事務所では、今まで特に手続きが出来なかったことはありません。)

署名証明書は2種類あります。

印鑑証明書の代わりの署名証明書は、2種類あります。

  1. A4用紙1枚の署名証明書
  2. 日本から送付した紙に合綴した署名証明書

上記のどちらでも効力は変わりません。
しかし、不動産の登記手続きや預貯金解約等の委任状等では、日本から送付した紙に合綴した署名証明書が好まれます。

遺産分割協議書を例に挙げます。
アメリカ在住の相続人に遺産分割協議書にサインをしてもらう場合、2つの方法が考えられます。

1つ目の方法

遺産分割協議書をアメリカに郵送して、自宅で遺産分割協議書にサインをして、日本領事館でA4用紙1枚の署名証明書を取得する方法。
この方法でも法的な効力は全く変わらないのですが、遺産分割協議書のサインと署名証明書のサインが同一人のものかどうかを判断する方法が無く、後日のトラブルが生じる恐れがあるため、通常司法書士等に依頼する場合には、この方法は敬遠される傾向があります。

2つ目の方法

遺産分割協議書をアメリカに郵送して、日本領事館で遺産分割協議書にサインをして、遺産分割協議書に署名証明書を合綴してもらう方法。
合綴が分かり辛いと思いますが、遺産分割協議書と署名証明書を、のりで張り付けて、2つの書類の接合部に日本領事館の印鑑を押してもらう方法です。
注意点としては、遺産分割協議書は日本領事館でサインする必要があります。事前にサインをしてはいけません。
上記の方法ですと、遺産分割協議書のサインが本人のサインであることを日本領事館が証明しているため、後日のトラブルが生じる恐れがなく、司法書士等が安心して手続きを行うことが出来ます。当事務所でも原則、こちらの方法で署名証明書の取得をお願いしております。

A4用紙1枚の署名証明書の注意点

署名証明書には拇印が押してありますが、遺産分割協議書に在留邦人(海外在住の相続人)がサインをする場合、通常、拇印は不要です。但し、日本国内在住の日本人が遺産分割協議書に署名する場合、実印の押印が必要で、遺産分割協議書が複数ページの場合、契印が必要となります。(法律用語では契印ですが、割印と言うとイメージが沸きやすいでしょうか?)
日本の法律文書では、複数ページある場合、差し替え等を防ぐために、各ページに契印を施します。
しかし、在留邦人(海外在住の相続人)の場合、そもそも印鑑を押す必要がなく、拇印も押さないことが通常ですので、遺産分割協議書の末尾1か所にサインをすれば本来は問題ありません。しかし、日本独自の契印という文化があるため、後日、手続きがとれないという事態を避けるために、A4用紙1枚の署名証明書を使用し、遺産分割協議書が複数ページある場合には、当事務所では、遺産分割協議書の全ページ右下に署名を頂いております。(各事務所毎に考え方があると思いますので、上記の扱いは当事務所独自の扱いとお考え下さい。)

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